2025年度が始まり、新たな職場環境への期待と不安が入り混じる中、退職代行サービスの利用が注目を集めています。
特に若年層を中心にその需要が急増しており、働き方や職場環境に対する意識の変化が背景にあります。
本記事では、2025年度の退職代行サービスの現状、利用理由、企業側の課題、そして今後の展望について考察します。
退職代行サービスの急増
退職代行サービスとは、労働者に代わって退職の意思を企業に伝え、手続きをサポートするサービスです。
2025年4月、複数のメディアが新卒社員による退職代行の利用急増を報じました。
ある退職代行サービスでは、4月1日だけで新卒5名を含む134件の依頼を記録し、翌日以降も新卒からの依頼が急増したとの報告があります。
この数字は、前年比で全体の依頼数が倍増するなど、退職代行の需要が拡大していることを示しています。
特に20代の利用率が高く、調査によれば直近1年間で転職した20代の約2割が退職代行を利用したとされています。
なぜ若年層が退職代行を選ぶのか
退職代行を利用する主な理由は、「自分で退職を言い出しにくい」「引き留められる」「職場環境への不満」です。
2025年度の新卒社員からは、「入社式での上司の言動に不信感を抱いた」「事前に聞いていた業務内容と実際が異なる」といった声が寄せられています。
たとえば、入社式で社長が新卒社員を公然と叱責したケースや、研修での威圧的な態度に自信を失ったケースが報告されました。
これらは、職場での心理的安全性の欠如や、期待と現実のギャップが退職の引き金となっていることを示しています。
また、SNSの普及により、企業の内情や他社の働き方が可視化され、若年層が自身の職場環境を比較しやすくなったことも影響しています。
「もっと良い環境があるはず」と考える若者が、早期に退職を決断する傾向が強まっています。
さらに、退職代行サービスの認知度が20代で8割を超えるなど、利用へのハードルが下がっていることも要因です。
料金も1~3万円程度と手頃で、即日退職が可能な点が特に若者に支持されています。
企業側の課題と対応策
退職代行の増加は、企業側にも課題を突きつけています。
約4社に1社が退職代行による離職を経験しており、特にITや金融、営業職での利用率が高いとされます。
背景には、コミュニケーション不足や労働環境の問題が指摘されています。
過度な引き留めやハラスメント、サービス残業の強要などが、退職代行を選択させる要因となっています。
企業側が取り組むべきは、まず職場環境の改善です。新卒向けに「バディ制度」を導入し、気軽に相談できる先輩を配置する企業も増えています。
また、入社前の情報提供を充実させ、ミスマッチを防ぐ取り組みも重要です。
退職代行を受けた際には、感情的な対応を避け、法令を遵守した手続きを進めることが求められます。
退職代行を「裏切り」と捉えず、組織の問題点を洗い出す機会と考える企業も出てきています。
今後の展望と社会への影響
退職代行の需要増加は、働き方改革や労働者の権利意識の高まりを反映しています。
Z世代を中心に、自分のキャリアやメンタルヘルスを優先する価値観が広がり、従来の「我慢して働く」文化は薄れつつあります。
一方で、退職代行の利用が一般化することで、企業と労働者の対話が希薄になる懸念も存在します。
調査では、50代の約半数が「自分で退職を伝えるべき」と否定的な意見を持つ一方、20代では「トラブル回避に有効」と肯定的な声が多いなど、世代間の価値観の違いも明らかです。
今後、退職代行サービスはさらに多様化する可能性があります。
たとえば、退職後の転職支援やメンタルケアをセットにしたサービスも登場しています。
企業側は、こうした動きに対応し、離職率を下げるための積極的な施策が求められるでしょう。
理想的には、「退職代行が必要ない職場環境」を構築することが、企業と労働者双方にとって最善の道です。
まとめ
2025年度の退職代行サービスは、若年層の価値観変化や職場環境への不満を背景に、急速に普及しています。
新卒社員が数日で退職を決断するケースも珍しくなく、企業には早急な対応が求められます。
退職代行は、労働者の権利を守る一方で、対話の機会を奪う側面も持ち合わせています。
働く人と企業が互いに理解を深め、納得感のあるキャリア形成を支える環境づくりが、今後の日本の労働市場の鍵となるでしょう。